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【アーティストインタビュー Vol.1】渡邉泰成 Taisei Watanabe

【アーティストインタビュー Vol.1】渡邉泰成 Taisei Watanabe

アーティストインタビュー第1回目となる今回は、東京藝術大学大学院に在籍しており数々の個展、グループ展を経験している渡邉泰成さんに、アーティストになるきっかけやインスピレーションの源など様々なインタビューをさせていただきました。

自己紹介と背景

自己紹介・アーティストとしての経歴

アーティスト 渡邉泰成
SNS https://www.instagram.com/taisei__watanabe/
Webサイト

https://www.taisei-watanabe.com/

今後の展示情報

8月9日(水)~8月15日(火)日本橋三越本店「現代作家茶碗特集」

10月、11月 ギャラリー数奇 企画展

 

経歴

1996年愛知県生まれ。2021年愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸科卒業。現在東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻在籍。自分自身が影響を受けた現代の文化や社会問題をテーマに作品制作している。制作拠点を関東に置き、主に都内で開催される展覧会に出展。近年の活動は、2021年SDGs×ARTs 十七の的の素には芸術がある(東京藝術大学大学美術館)、2022年公益財団法人クマ財団6期生採択、コミテコルベールアワード2022ファイナリスト選出など。

アーティストとして活動するきっかけは何でしたか?

6、7歳の頃に漫画家になりたいと漫画を描き始めたことがきっかけだと思います。スポーツなどもやっていましたが、高校卒業まで一貫して漫画は描き続けました。その中で、高校3年生のころに大手出版社の方と知り合い、連載を目指す形になったのですが漫画の世界の厳しさを知り断念しました。

また元々どの教科よりも図工の成績が悪く、それに加えて、とても悔しかった出来事も自分のアーティストとして活動するきっかけの1つだと思います。


それは授業参観中の保護者が廊下に並んでいる美術の時間で作成した作品をみていただいている時のことでした。急に廊下から爆笑が聞こえてきて、「何で笑っているのだろう」と思って見てみると、自分の作品を指差して笑っていて、「ある意味天才だ」などとある種バカにされたことでした。この思い出はとても悔しくもあり、自分にとって衝撃的な出来事でした。

この悔しい経験から絶対にものづくりをできるようになってやろうという意識が常にどこかにあったのかもしれません。

そしてその思いは進学にも反映され、愛知県立芸術大学への進学を決め、美術・芸術漬けの日々が始まりました。

どのような芸術的バックグラウンドがありますか?また、それはあなたのアートにどのように影響を与えていますか?

今の作風にどう反映されているかは分かりませんが、幼少の頃から高校まで漫画を描き続けていて、ピアノやトランペットなどの楽器にも親しんでおり、他にも習字を習っていました。

現在でもアイデアが煮詰まった時などに気分転換に弾けるようにピアノは置いています。

影響という意味では、大学で学んだ大量生産の工芸からもインスピレーションを受けています。以前制作した黒いりんごが敷き詰められた作品は大量生産・大量消費社会の現代の構造に対する違和感・恐怖を表現した作品です。

「Crowd」2023/陶磁器 撮影:クマ財団事務局

アートスタイルとインスピレーション

あなたのアートスタイルを説明してください

他の用事があっても、帰りが遅くなっても毎日制作に関係することを行っているのですが、うまくいくことはほぼなく、最終的に成功するのは1割ほどです。単純に自分の技術不足も大きいですが。笑

現在は1個の作品を生み出すのに、おおよそ10個の失敗を出していて約2ヶ月ほど時間をかけています。

失敗したものは、どうしてもゴミになり捨ててしまいますが、土などの材料も世界的に採れる量が限られてきています。そんな中で、失敗した時に「再生不可になってしまうものを作る自分はなんなのだろう」「自分が作ることによって失われていくものがある」と考えることが多くなってきました。そういったジレンマの中で「土らしさをいかになくすか」という一見陶芸には見えないスタイルにも興味を持ち始めています。

「vegetable skin」2022/陶磁器 撮影:クマ財団事務局

「vegetable skin #melon」2022/陶磁器 撮影:クマ財団事務局

あなたのインスピレーションの源は何ですか?尊敬するアーティストや文化、体験から影響を受けていますか?

僕は田舎育ちなんですが、そこがインスピレーションの源かなと思います。りんごや野菜などの作品を作っているのも、実家で農作物の栽培をしていた原体験が源です。

尊敬するアーティストは数多くいますが、実際に関わってきた人からの影響が大きいです。その中でも一番尊敬しているのは両親です。

また漫画家を目指していたので、漫画からのインスピレーションを受けていますね。最近制作しているカラフルな工芸作品は漫画のコマ割りなどの表現をイメージしています。

すごいと思う漫画Best3(好きな漫画は他にある):

・寄生獣

・レベルE

・スラムダンク

好きなジャンルはスポーツ漫画とか(小中高と運動部だったため)

「layer bowl #0」 2022/陶磁器・釉薬・上絵具・金

「Teabowl」2023/陶磁器・釉薬・顔料・金

アートを作成する際のプロセスを教えてください

歩いたり、自転車に乗ったり、空をみたりしていると言葉が浮かんできますね!

そして、その言葉をひたすら羅列・整理していってから手を動かす工程に入ります。その後はトライアンドエラーの繰り返しです。

他の陶芸作家さんは窯から出した際の、土と火による偶発的な現象を作品に取り入れることが多いですが、僕は作り初めから「想定された作品を作る」為に「窯をどう操作するか」「どの素材をどのタイミングで使うか」などを緻密に思考して、そこからズレると失敗となる。だから失敗の数も必然的に多くなってしまうんですよね。

違う方向性に良いものができた際には、別の作品に活かしますが、その時作っている作品は、それまでに考え、積み上げてきたものを貫きつつ自分の許容範囲の中で合格を与えたものが正式に作品となります。

ちなみに、陶芸の下図はipad上で描いており、何℃でどんな色が出るかは材料によって変わるため、描画ソフトのレイヤーごとに温度ごとの色を載せて、その素材の温度帯に載せれる色を毎回選別して焼いていくという作業を行っています。

しかし土の表情を活かした作品への憧れももちろん強いため、土という素材を追及してる陶芸作家さんは本当に尊敬しています。

アトリエの様子

最近の作品とプロジェクト

最近の作品や現在進行中のプロジェクトについて教えてください

修了制作の実験を繰り返しながら、今年参加する展示会の作品を毎日制作しています。
その他にもギャラリーでのグループ展などが控えています。

- 過去の展示会の様子 -

現代作家茶碗特集2022 -日本橋三越本店にて- 撮影:清水絢子

COMITE COLBERT AWARD 2022 -東京藝術大学大学美術館にて- 撮影:永井文仁

その作品を通じて何を表現しようとしていますか?

修了制作はまだ自分の中で考えて整理している段階ですし、発表した作品が手元にあるわけでは無いので詳細は言えないです。

これまでは自分自身が身近で影響を受けたことを作品に取り入れてきましたが、自分の持つ課題が世界共通の課題でもないですし、自分がアートをする必要性を考えながら日々自問自答しています。でもやっぱり一番は自分が楽しいと思えることをしたい。

工芸的な器を作る時とアート作品を作る時は考えることが全然違います。そこをどう接続していくのか、あるいは別々の両輪を引っ提げていくのかは今後の自分自身の作家像としての課題です。

学生とアーティストのバランス

学業とアートの創作活動をどのようにバランスさせていますか?

美大や藝大の場合ですが、学校で習うことや実習することは全て自分の創作活動に繋がると感じています。なので、美大・藝大生の場合は悩む必要はないのではないかと思います。

学生生活があなたのアートにどのように影響を与えていますか?

同じ工芸をやっている人の集まりだった学部時代から、藝大の先端藝術表現専攻に入った際は、様々な分野を学んできたスペシャリストが集まっていて、すでに売れている人や同年代でも自分の知らないようなことを知っている人が多くいました。

愛知での学部時代も努力家やセンス爆発の同級生が多くて、その中で置いていかれないように踏ん張って自信を持って来たつもりでしたが、更に出鼻を挫かれ「とんでもないところにきてしまった」と最初は正直病んでしまいました。笑

だからこそ学べることが多く藝大に来てよかったとも今は思えています。

アーティストとしての展望

卒業・修了後、アーティストとしてのキャリアを追求しますか?

どんな形であれ、アーティストとして制作を続けていきたいと思っています。

あなたの理想的なアートキャリアとはどのようなものですか?

制作した作品を通して人と関わり、作品を作り生きていくことです。

5年後、10年後のご自身をどのように見ていますか?

絶対に売れようという気持ちはあって、具体的にどのようなキャリアを積んでいこうかという理想的なイメージはある。しかし現実は甘くない瞬間の方が多いですね。

ただ、元々漫画家になろうとしていたのに今では陶芸をしていたり、さらに藝大では他の分野も挑戦するというように自分が楽しめる道を選択し続けていると、ギャラリーから声がかかって展示会を開けたりなど予想外のことが起こりうるのも事実です。これからも自分が楽しめる道を選択し続け、後悔のない選択をしていきたいです。

アドバイス

同じように学生でありながらアーティストとしてのキャリアを追求しようとしている他の人々に対して何かアドバイスはありますか?

自分は誰かにアドバイスできる立場でもないですし何を言っていいかわからないですが、

過去の自分に対して、「焦らずいきましょう。」と言いたいですね。

消費の速度が早すぎる現代で、20代のうち、学生のうちに売れないといけないという思いが付き纏い自分の首を絞めてしまっていると感じます。

周りの才能あふれる人を見て、劣等感を感じることもあると思うがその人になることはできないし、背伸びしても自分の実力以上のものは出来ません。

だからこそ、自分のやってきたことや想いを信じながら、また毎日ひたすら積み重ねていきましょう。と伝えたいですね。

自分自身がそうなれるようにまずは頑張ります。

「C -component-」2021/陶磁器・釉薬・上絵具・金

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