私はどの時代のどの国でも女性の悲劇を「美しいもの」として消費する文化が世界にはあると感じています。
シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の登場人物であり、古典絵画において価値の高い『オフィーリア』と、日本の室町時代に生きた『地獄太夫』という威風堂々とした女性の文脈を1つのキャンバスに描きました。
地獄太夫は子供の頃にあまりの美貌のため遊女として売られてしまった人です。当時の日本では遊女の美しいファッションを民衆が真似をする程遊女の価値が高く、現代でいうアイドルのような存在であったそうで、現在でも多くの若者が遊女の真似をしたコスプレをして写真を撮ってSNSに投稿しています。しかし、遊女の仕事は身を売り生きていく人たちであり負の歴史であることは確かです。
一方、オフィーリアの死は、文学の中で最も詩的に書かれた死の場面の一つとして称賛された物語です。彼女は上級階級の娘であり家族や恋人にも恵まれましたが、その恋人が自らの家族を殺してしまうという悲劇に陥れられました。 これらを見て、どの時代のどの国でも女性の悲劇を「美しいもの」として消費する文化が世界にはあると感じています。
『昇華か消費か』